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【考察】現代の聴者に対する皮肉が効いた曲「神っぽいな」/ ピノキオピー

ボーカロイド

こんにちは!citrusです。

今回はピノキオピーさんの新曲「神っぽいな」を紹介したいと思います。

ピノキオピーさんといえば「すろぉもぉしょん」などの曲を投稿しているボカロPですね。

そしてボーカロイド曲の中では(体感)少数派である「作者の意見や考えがよく反映された曲」を作られる方です。

そんな方の今回の作品ですが、いつにも増して強烈な皮肉が入っていますね。最近の音楽作品を示唆しているようなフレーズもちょこちょこ出てきます。

それでは行ってみましょう!

「神っぽいな」とは?

この曲は2021年9月17日にYouTubeとニコニコ動画に投稿された、音声ソフト「初音ミク」を使ったボーカロイド曲です。

「神っぽいな」はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=EHBFKhLUVig

ピノキオピーさんのYouTubeチャンネルはこちらhttps://www.youtube.com/channel/UCMMBGMjrrWcRZmG_lW4jC-Q

特徴的なのは、タイトルと冒頭でも書いた通り「現代の聴者に対する皮肉」が歌詞にめちゃくちゃ入っていることですね。

この楽曲を作成するにあたって、ピノキオピーさんはYouTube Liveで「『〇〇っぽい』ということを意識して作った」とおっしゃっています。

Liveのリンクはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=H_tVf5q4dwg

その言葉通り、この曲の歌詞やMVに「〇〇っぽい」要素がかなり入っていますね。気付く人もいれば気づかない人もいると思います。一部ボカロ界隈の要素を取り入れているので。

ココが好き!

・作者の思いが詰まった歌詞!

もうこの曲はこれだと思います。もちろんメロディでめちゃくちゃ好きな部分はあるんですけど、この人の作品は歌詞について考えなきゃいけない、ってくらいにはメッセージが込められていると思います。

前提として、この曲の歌詞は人によって解釈がちょっとずつ変わってくると思うので、今回は私の一意見であることを念頭にお願いします。

それでは印象的な歌詞を引用して考察していきましょう!

一番の歌詞

愛のネタバレ 「別れ」っぽいな

人生のネタバレ 「死ぬ」っぽいな

なにそれ意味深でかっこいいじゃん…

それっぽい単語集で踊ってんだ 失敬

歌の冒頭の歌詞ですね。「愛」のネタバレが「別れ」で、「人生」のネタバレが「死ぬ」というのは、要するに歳を取るにつれて行く末がわかっていくということでしょう。

そして次の「意味深でかっこいい」というのは、何か作者が意味を持たせた楽曲を鑑賞した聴者が持つ、曖昧な感想の代表みたいなものですね。

最後「それっぽい単語集で踊ってんだ」には、作者が歌詞に込めた意味を理解できずに漠然と「これはかっこいい!」と評価している聴者を皮肉っている部分だと思います。

この皮肉、結構強烈ですよね。それも割と多方面に喧嘩を売っているようにも聞こえるので、よくこんな歌詞を出せたなと驚いています。あ、私はこういう皮肉は結構好きな方です。

それでは次の歌詞をどうぞ。

とぅ とぅる とぅ とぅ とぅる ”風”

とぅ とぅる とぅ とぅ とぅる ”風”

とぅ とぅる とぅ とぅ とぅる ”風”

ぽいじゃん ぽいじゃん

この謎の歌詞、「〇〇っぽい」というのを如実に表していますね。

「とぅ とぅる とぅ とぅ とぅる」という部分、多分意味なんてないんです。というより私はここの意味が分かりませんでした。

恐らく最近の曲に増えてきた「特に意味はないけどとりあえず歌っておこう」というパートですね。

そして最後にくっついている「風」というのは、例えば「和風」とか「今風」とかの「〇〇風」だと思いました。この解釈なら、テーマの「〇〇っぽい」と同じような意味として捉えることができます。

次の部分です。

もういいぜ もういいぜ それ

もういいぜ もういいぜ 逆に興奮してきたなあ

おっきいね おっきいね 夢 おっきいね おっきいね

景気いいけど 品性はTHE END うええい うええい

Gott ist tot

あまり聴きなれない言葉が挟み込まれます。この”Gott ist tot”の意味は「神は死んだ」というもので、あの有名なフリードリヒ・ニーチェの言葉だそうです。和訳すると皆が知っている言葉になりますね。

MVではシスターの一枚絵が使われており、さらにそのシスターの頭の上には輪っかがついていることから、ここからも「神は消え去った」という意味を汲み取ることができます。

本当の神が消えたため、今は「神っぽい」ものが現れているのでしょうか。

次はサビです。

神っぽいな それ 卑怯 神っぽいな それ ”My God”

アイウォンチュー ウォンチュー IQが下がっていく感じ

ここの「アイウォンチュー」っていうフレーズ、いろんな曲で歌詞の間埋めとかに使われている印象ありませんか?

私はあります。「なんでそこにそれが入るん?」っていうの、よくよく歌詞を聞いていると結構ありますね。特に最近、テンポの早い曲での合いの手感覚で入れられることが多い気がします。

そんなあまり意味が含まれていないフレーズを、「IQが下がっていく感じ」と表しているのではと私は考えました。要するに、「特に意味がない歌詞」ということです。これも「現代っぽさ」がありますね。

邪心っぽいな それ 畢竟 邪心っぽいな それ My God

アイヘイチュー ヘイチュー 害虫は どっち

この部分はさっきの歌詞の韻を思いっきり踏んでいますね。「卑怯」と「畢竟」、「アイウォンチュー」と「アイヘイチュー」、「IQ」と「害虫」とかでしょうか。

ちなみに「畢竟」とは「結局、つまるところ」といった意味があるらしいです。

そして次の歌詞がこの楽曲の大きなメッセージの一つを表しているでしょう。

その髪型 その目 その口元

その香水 その服 そのメイク

アレっぽいな それ 比況 アレっぽいな それ

その名言 その意見 その批評

そのカリスマ そのギャグ そのセンス

神っぽいな それ 卑怯  ぽいな ぽいな ぽい 憧れちゃう!

ここはもう直球ですよ。全てを何かに例え、「神っぽい」とまとめてしまう人々を揶揄していると考えました。

世の中のクリエイターさんたちが様々なことを考えて創り出したものを、「過去の何かの模倣」にしてしまうという。創っている側からしたらたまったものじゃないですよね。

「比況」というのは「何かと比べる」という意味なので、過去のものと現在のものを比べて「アレっぽい」と言っているのが分かります。

二番の歌詞

続いて二番ですね。

メタ思考する本質は悪意? 人を小馬鹿にしたような作為

無為に生き延びるのは難しい 権力に飲まれて揺らぐ灯り

神を否定し神に成り代わり 玉座で豹変する小物達

批判に見せかけ自戒の祈り Do you know?

ここの1フレーズごとに半音ずつ上がっていくのが大好きなんですよね!何かが少しずつ忍び寄ってきていそうな感じがします!

さてこの歌詞ですが、先程までとは変わって少し難しい表現が入っていますね。しかし大事なのはこの歌詞を理解することではなく、最後についている「Do you know?」だと私は思います。

何個か訳し方があるのですが、今回は「分かった?」という意味で訳したいと思います。この問いかけが誰に向けてなのかを考えながら、次の歌詞を聴いてみて下さい。

何言ってんの? それ ウザい 何言ってんの? それ

意味がよくわかんないし 眠っちゃうよ マジ

飽きっぽいんだ オーケー みんな 飽きっぽいんだ オーケー

踊れるやつ ちょうだい ちょうだい ビーム

さあ、この部分が前の「Do you know?」の答えだと思います。内容を読むとまあ散々ですね。言われたい放題です。

これも恐らく現代の聴者のことを指しているのだと考えます。難しい表現になると、それを理解しようとせずに退屈がる人が一定数出てきます。

また、この部分の曲がスローペースなのと「踊れるやつちょうだい」という歌詞から、「意味が難しくて遅い曲より、歌詞が単純でノれる曲が良い」という一意見を表していると思います。

最近だとTikTok等で様々な曲が使われていますよね。ああいうのを指して、「踊れるやつ」の方がいいということなのでしょう。

きっしょいね きっしょいね それ

きっしょいね きっしょいね

逆にファンになってきたじゃん

ちっちゃいね ちっちゃいね 器

ちっちゃいね ちっちゃいね

天才ゆえ孤独ですね かっけえ… かっけえ…

「きっしょいね」とは、曲のメロディにおける不協和音のことを表していると思います。そして「気持ち悪い感じが逆に良い!」という意味での「逆にファンになってきたじゃん」ということでしょう。

次の「ちっちゃいね 器」はそのままの意味ですが、捉え方を変えると「天才ゆえ孤独」となるらしいです。ちょっとここはあまり分かりません。

神っぽいな それ 卑怯 神っぽいな それ  ”My God”

超健康 健康 言い張って くたばっていく感じ

ヤケっぽいな それ 畢竟 ヤケっぽいな それ ”My God”

もう哀愁 哀愁 エピゴーネンのヒール

サビです。一部同じところがあるのでそこは解説しません。「超健康 健康 言い張って」の部分ですが、恐らくこれはAdoさんの大ヒット曲「うっせえわ」のパロディと思われます。

そして「エピゴーネン」とは「模倣者」「亜流」といった意味があります。ただ「エピゴーネンのヒール」の解釈の仕方がちょっとよく分からなかったです。皆さんの考察をコメントで教えて下さい!

この後は一番と同じような展開になるので、考察も同じような感じになります。

あとは最後だけ!

愛のネタバレ 「別れ」っぽいな

人生のネタバレ 「死ぬ」っぽいな

すべて理解して患った

無邪気に踊っていたかった 人生

ここは曲の最初の歌詞とほとんど同じですが、最後の最後「すべて理解して患った 無邪気に踊っていたかった 人生」という部分の考察をしていきたいと思います。

今回のテーマが「〇〇っぽい」ということで、この表現って「何かに対して過去のものに例える」ということをしているわけですよ。

そして「すべてを理解して」「人生」というところから、

『歳を取るにつれていろんなことを理解していき、目の前にあるものが今まで見てきたものの模倣に見えてしまったため、真新しい気持ちで楽しめなくなってしまった』

ということだと私は考えました。

こんな感じで私の歌詞考察は終わりにしたいと思います。

私の意見

さて、こんなに聴者側への大きなメッセージがあったので、ちょっとだけ私の意見的なものを書いてみようと思います。

私は創っている側ではなく聴いているだけなので、本当の創っている側の気持ちなんて微塵も分かりません。

それでも、私は「音楽はどう楽しんでも良いもの」であると考えています。

あ、もちろん常識の範囲内でですよ。著作権の侵害等の法律違反や、楽曲を台無しにするような二次創作は言語道断です。

創作者側はその楽曲に何か意味を込めたのだろうし、私はそれを考えることが好きな人間なので良いんですよ。

一方で「メロディが好き!」「雰囲気が好き!」「テンポが好き!」といった楽しみ方も絶対にアリだと思います。

ただ、聴く側である私たちが頭に留めておかなければならないことは、作り手さん達の作品というのは「唯一無二」であるということです!

雰囲気が似ている、歌詞が似ている、コードが似ている、たくさんあると思います。

それでも「全く同じ作品」というのは絶対にあり得ない

だからこそ他の作品と比べることはやってはいけないし、その唯一性を破壊するパクリはあってはならないものです。

というのが、私の意見です。

まとめ

ピノキオピーさんの「神っぽいな」を紹介しました!いかがでしたでしょうか?

ちょっと真面目になりすぎてしまいましたかね?

皆さんの意見等もコメントやTwitter等で聞かせて欲しいです!

これからもゆるーくいろんな楽曲を紹介していきたいと思います!

それでは!

コメント

  1. ポン酢 より:

    1番の歌詞の
    「もういいぜ〜うええええい」
    までが抜けてますよ

  2. yuw より:

    自分では超健康とかエピゴーネンの解釈が分からなかったのですが、なるほど、言われてみれば超健康はうっせぇわのパロディですね。そうなると「エピゴーネンのヒール」も何かのパロディではないかと思い、少し考えてみたのですが、もしかしたら「回復術士のやり直し」という「小説家になろう」発のライトノベルのことなのではないかと思いました。この作品にはパクリ疑惑があり、アニメ化に際してそれが話題になりました。また主人公は回復魔法「ヒール」を多用します。

    • citrus07 より:

      コメントありがとうございます!そのライトノベルについて少し調べてみましたが、確かにあり得そうですね!新しい解釈をありがとうございます!

      • より:

        『かっけぇ』の部分もうっせぇわと同様に何かの某曲のパロディらしいですがそれが私何か分からないんですけれども、主様は分かりますか…?

        • citrus07 より:

          コメントありがとうございます!そうですね、私はこの部分を「天才ゆえ孤独」なクリエイターに対し、その振る舞い方に対して異様に「かっけえ」と持ち上げている消費者のことを指しているのかなと考えてみたりしました!何のパロディなのかはちょっとわからないですね、申し訳ないです。

  3. tanashino より:

    哀愁、エピゴーネンのヒールについては、エピゴーネン→模倣者、独自性のないもの、ヒール→悪役と考えるとオリジナルの質を超えることができなかったため模倣者として悪役になってしまったクリエイター対する哀愁と考えると自然かなと思いました。

    • citrus07 より:

      コメントありがとうございます!なるほど、すごく自然ですね!メッセージとしても曲のテーマに良く沿っていて、とてもいい解釈だと思います!

  4. チェルシュ より:

    エピゴーネンのヒールは、ヒールにかかとという意味があります。
    そこから転じて、エピゴーネンのヒール(模倣者で、元の足元にも及ばない)
    という意味なのではないかと思いました。

    • citrus07 より:

      コメントありがとうございます!なるほど確かにあり得そうな解釈ですね。他のコメント欄でも色んな解釈がありましたが、ピノキオPさんがそれらを全部ひっくるめて「ヒール」という歌詞を書いていたら本当にすごいですよね!

  5. レノア より:

    気に入らなければ周囲の人を攻撃してしまう、「ちっちゃい器」の人は周りから避けられて孤独になった様子を「孤独な天才」と笑ってる、という解釈をしました。

    模倣されて作られて(エピゴーネン)使い古された娯楽(ヒール)、つまり絵や音楽やストーリーが、自分が以前に経験したものに似ていて「あれっぽい」と思う、という解釈はどうですかね?

    逆になんで「もういいぜ」なのか分かりませんでした。「もう」っていうことは飽きてるということなのに「興奮する」のかがさっぱりです。

    • citrus07 より:

      コメントありがとうございます!私の解釈としては、何度も擦られたネタがネット上でおもちゃになるっていうあの謎の現象を指しているのではないかな〜なんて考えたりしました。正直根拠はないので考察というよりは妄想に近いですね。

  6. たく より:

    コメント失礼します。
    エピゴーネン=なにかの信者かなあと思いました。作者自身がどんな意見を言っても、その信者(エピゴーネン)達のヒールになってしまうからその前の歌詞に哀愁(ああ、悲しいなてきな)ってあるのかなあと解釈しました。

  7. ヤマモト より:

    ”エピゴーネンのヒール”は「模倣する悪者」もしかすると
    歌詞の中に出てくる「Do you know?」と問いかけた人なのでは?と考えました。
    彼(彼女?)は歌詞の中で消費者に対し「~Do you know?」と問いかけた結果、
    消費者から「何言ってんの?/ウザい/意味がよくわかんない/眠っちゃう」と評されます。
    また、その際に「踊れるやつちょうだいちょうだいビーム」をくらいました。
    ビームをくらった結果、神(この場合とあるコンテンツA)を否定し神に成り代わり、
    神になった後は玉座で豹変し消費者の求める「っぽいもの」を量産するようになる。
    その「オリジナルを捨てて大衆迎合のため模倣する姿」に哀愁を感じ、
    ”エピゴーネンのヒール”と嘲笑しているのではないでしょうか。
    笑ってるのは・・・この歌の作者かな?

    駄文失礼しました。

  8. 新都心 より:

    なるほど、こんな解釈があるんだと参考になりました
    私は『流行りの歌を○○っぽいと揶揄する人(≒作者)への批判(≒自戒)』と解釈してました

    「メタ思考する本質は悪意?~Do you know?」の内容が結構重要なのかなと思っています。
    「メタ思考=○○っぽい!と捉えること」
    だとすると、
    1番で主張してきたことを否定するのが2番となります。
    おそらく作曲者ならではの視点や音楽理論の知識などから、流行りの音楽を聴くとすぐ”カラクリ”に気づいてしまうもので、
    それを元に歌詞にあるような揶揄をしてしまうことへの自戒の意味を込めて、
    2番の歌詞があるのだと思いました。
    そこと「無邪気に踊っていたかった 人生」が繋がってくるのかな、と。
    長文失礼しました。

    あと、「もういいぜ~逆に興奮してきたなあ」はサンドウィッチマンのネタを入れているのかな…(ピノキオピー氏はお笑いファン)

  9. 西澤康明 より:

    エピゴーネンのヒールは安っぽい創作物に対してすぐ神と崇める大衆に対してちゃちゃを入れる悪役と解しました、そんな流行りに乗らない斜に構えた態度はある意味疲れるので素直に踊っていたかったの詞に繋がるのではないでしょうか?感動ポルノ作品が神と持ち上げられてるとちゃちゃ入れたくなるので気持ちわかります、昔あった一杯のかけそばとか世界の中心で愛をさけぶとか。

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